マルドゥック・ヴェロシティ 1
読了日:2008/08/10
マルドゥック・スクランブルの主人公・バロットと死闘を繰り広げた元軍人のボイルドが主人公となって、発展途上のマルドゥックという都市の中で起こる様々な出来事が、息つくヒマもないほど怒涛の展開で繰り広げられていく。
この1巻はまだまだ序章と言う感じで、中盤辺りまではスクランブル時代以前のマルドゥックシティや楽園になる前の研究所とその主要メンバー、さらには09メンバーについての能力や性格、敵対する組織に対する基礎知識を紹介 といった感じ。
とはいっても今回も飽和しそうなほど凝縮された話で、ぐいぐい引き込まれてあっというまに読了。予想通りの寝不足。
スクランブルでは、機械のように感情がなく破壊のためのみに存在するような印象であったボイルドが、悩み、怯え、傷つき、迷う様子が在り在りと書かれている。
スクランブルでのボイルドを知っているために、一体これから先、彼の身に何が起こるのか不思議でたまらない。
敵対する組織も巨大で世界観が大きく、さらには登場人物も多い(笑)。
マルドゥック・ヴェロシティ 2
読了日:2008/08/12
いよいよ物語が大きく動き出す。
ヴァンプ=ナタリアに隠された意外な事実と、彼女が09の保護下に置かれたことで物語が一気に加速する。
ボイルドと彼女が惹かれ合う様子を見守りつつ、結果はわかっているんだけど、それでも、ナタリアがボイルドの「有用性」で在り続けてくれたら良いのに・・・と強く願わずにはいられない。
冒頭には09メンバーにとって哀しい事件が起こり、中盤からはニコラスの「バック」「L4E」への手がかり、カトル・カールをめぐる真相が徐々に明るみに出てくる。
幾重にもかかった伏線、計算され尽くされた計画。種明しされるまで、全く想像がつかない。
血筋、権力、流儀、隠蔽、弱み。小さな括りのなかで巨大な繋がりを見せる人々。
終盤では2巻ラストの大きな事件でもあり、今後の09を大きく揺るがす事件が起こったところで幕が閉じる。スクランブルでのボイルドになってしまうのは残された次の1冊の中なのだと思うと、3巻は相当な加速を見せると予想できる。
マルドゥック・ヴェロシティ 3
読了日:2008/08/14
とうとう終焉を迎える最終巻。どれもこれもが驚きの真実ばかり。どれもこれもが悲しいことばかり。
09メンバーが、ボイルドが、悲劇に向かって突き進んでいくのが、読んでいて本当に痛々しい。
心通う仲間達が歪みそして壊れ、裏切りと別れを繰り返し、無残な姿になっていく様をとめることが出来ないボイルド。自分にとっての「最後の良心」を護るため、自ら選んだ道へ突き進む心はどんどん冷え込んでブラックホールのような虚無に飲み込まれていく。
「世代交代」という時代の歪みとうねりに巻き込まれただけだった。
ひとつのギャングとウフコックと、そして09の存続のため、命よりも大切なものを賭けて突き進んだボイルドは、スクランブルのボイルドとは「別人」なんだろう。
ヴェロシティのボイルドは、誰よりも人間らしい人間だ。
求めたものはスクランブルのバロットと同じなのではないだろうか。
作者・冲方さん曰く、この「マルドゥック・ヴェロシティ」という物語は【「都市と男と告白」の物語】であり、この物語そのものや結末は【ディムズデイル=ボイルドが、マルドゥックシティにおいて、虚無を体現するに至った軌跡を追いかけ続けた結果】なのだ。
救いのない醜悪と破滅が溢れ返る中、人間が持つ心の闇のようなコントロールできないものが、目を覆いたくなるほどの生々しさで描き出されている作品だ。
元気のないときには手を出さない方がいい。心が病んでしまいそうだし、睡眠不足になるのは避けられないはず。
ミミズクと夜の王
読了日:2008/08/24
おとぎ話のように、童話のように、哀しくて暖かい。
人が人らしく生きるためには何が必要なのか。
幸せはいったいどこにあってどんなカタチなのか。
そんなことを考えるきっかけに成り得る物語だった。私も暖かで柔らかいフクロウの腕の中で眠ってみたい。
ごめん
読了日:2008/08/27
「天国の蝿」「ごめん」「夏を喪くす」「最後の晩餐」収録。
全ての話しが「失う」物語。そして「失ってゆく一歩手前で気付く」物語。
父、夫、恋人、体の一部、親友を失う。そして目に見えないナニカを失う。
全ての物語がゆっくり淡々と進んでゆくんだけど、中でも「夏を喪くす」「最後の晩餐」が好みかな。
人は大切なものを失わないと、その大切さに気付けないのかな。「大切なものは失ってから気付く」それじゃあ意味ないのにね。失う前に気付けるようになりたい。
人のセックスを笑うな
読了日:2008/10/07
ずっと気になってたんです、ナオコーラさん。だってまず名前がふざけてるでしょ、コレ?おちょくられてる感があって気になってたんです。
んで、さらにはなんやらの賞を受賞した作品が「人のセックスを笑うな」って。しかも映画化。しかも大好きな永作さんが主演。いったいドンナ女よ!?ドンナ世界を描くのさ!?
が、しかし。
予想に反して穏やかだったのです。
ファンキーでもクレイジーでもなく、悠々と緑でいっぱいな公園を散歩しちゃうぐらい穏やか。詠美ねーさんのような「粋」さも、江國さんのような「隠れた狂気」もなく、ほんとうに穏やか。
ユリにナオコーラさんを重ねて考えてしまったのは許して欲しい。ユリのような人なのだろうか?それとも穏やかなのはこの作品だけなのだろうか?
私の男
読了日:2008/10/09
桜庭さんの著書は他に「少女七竃と七人の可愛そうな大人」を読んだだけでまだ2冊目なのですが、この2作品には共通する点がいくつかあって驚いてしまった。そしてこんな不道徳的(笑)な作品が直木賞を受賞とは、それもまた驚く。
物語の軸となる淳悟と花の関係を言葉で表すのは簡単なのだけど、それに纏わる感情は果てしなく複雑。
帯に「朽ちていく幸福と不幸」と記されていたけれど、まさにソレ。
他になにもいらない程に幸福なのに、同時に絶望するほどの不幸をも感じる。そして朽ちていくのはふたり共に。
これ以上はないほどに排他的で退廃的。
血と過去に縛られたふたりの凶気のような関係が読むものを魅了するのかも。濃度が高い。タールみたいだ。
ひとたび読み出せば、最後まで突っ走って読み進めてしまうはず。
群青
読了日:2008/10/19
やはり宮木さんには宮木さんそのもののお話しがイチバンあっているのだろうと感じた。でも、やっぱり繊細さと細かな描写は宮木さんでした。
沖縄の話しというと、原田マハさんの「カフー…」が記憶に新しいのだけれど、それとはまた違う沖縄を感じさせてもらった。
「カフー…」はさらさらとした砂浜の砂のような感触だったんだけど、この「群青」は深海のひんやりした冷たさと、照りつけるような太陽の光、梅雨の時期のじっとりしたけだるさを感じた。
潜る龍二と彷徨う一也が出逢うシーンがとても印象的。
儚くて綺麗で、美しい。美しすぎて怖いんだろうな…。
涼子を中心に、悩み傷つく様々な男たち。涼子はとっても幸せだと思う。例え最愛の人を失っても、そばにいてくれる人がいるんだから。
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない
読了日:2008/10/19
表紙や挿絵、中学生視点の軽い語り口にごまかされてはいけない。この話、取り扱ってる内容はなかなかヘビーです。
でも、人魚云々のメルヘンチックな細かな設定は理解できず…。あの設定でなくてはいけなかったのかな?やはりライトノベルだから?
それでもそれらを気にしないようにして注意深く読み進めれば、私が密かに桜庭作品のテーマではないかと思っている内容が顔をだす。
まだ無力な子供たちの小さな戦いを見逃してはいけない。
ファミリーポートレイト
読了日:2009/07/07
「私の男」で、血の絆について深く深く掘り下げていった桜庭さんだったので、とーーっても期待して手にしたんだけど、意外にドロリとしてなくて拍子抜け。
前半の、母と一緒に暮らす部分が好き。後半のひとりになったあたり・・・ちょっとグダグダ感が否めない。
「私の男」は異性の親子。こちらは同姓の親子。どちらのほうが苦しんだろう。
草祭
読了日:2009/07/10
「美奥」という土地をキーにして、5つの短編からなる1冊。
恒川さんの巧さがちゃんと伝わってくる。お風呂で目閉じて髪洗うのがちょっと怖くなるあの感覚。ホラーのようでファンタジーのようで、ミステリーっぽくもある。
でもやっぱり、恒川さんは短編よりも長編の方がすき。ひとつの世界を濃く書いて欲しいな。そういえば恒川さんはデビュー作から読み続けてる。
今でもいちばんすきなのはデビュー作の「夜市」。
花々
読了日:2009/07/29
「カフーを待ちわびて」のサイドストーリーということで、期待をして読み始め。
2人の女性の目線で物語が進むんだけど、確かに、なるほど。ところどころで「カフー‥」の中での出来事がリンクしてくる。あの物語が好きな人にとっては、あの空気や匂いがまた感じられる懐かしい1冊だと思う。期待を外さない、素敵な物語。
「自分探し」とかいっちゃうと恥ずかしいんだけど、この中の2人はまさにそれをして、見つけたんだと思う。
悲しいシーンだってあるのに、なんだかゆったり優しい気持ちになるのはやっぱり沖縄の空気のせいなのかな。
赤(ルージュ)・黒(ノワール)―池袋ウエストゲートパーク外伝
読了日:2009/07/30
最近の石田氏の著書には食指が動かなくなりつつあるので、懐かしのラインを攻めてみた。
IWGPの外伝なんだけど、予想ほどIWGPの登場人物は絡んでこなかった。IWGPとは全く関係ない人が主人公で、その主人公にとって重要な人物のなるのがIWGPで出てくる「サル」って感じで話が進む。
サルがでてくるってことは当然、ヤクザ絡みなワケで。ヤクザ絡みってことは当然、銃や金やらなんやらってでてくるワケで。主人公がなんとなく「マコト」っぽかったかな。やっぱりこういう石田作品のほうが好きだなぁ。
スピード感や勢いに溢れた作品。
W/F ダブル・ファンタジー
読了日:2010/03/10
いままでわたしが読んだ村山作品の中でも、ダントツでセクシュアル。主人公の年齢が高いということも相まって、なかなか濃い内容の長編だった
。男性にはどう受け止められてるんだろー、コレ。全然予想と違うストーリー&ラストだったんだけど、その予想を裏切られた中でも、あまり納得のいかない感じというか・・・結局なんでしょーね。まとまりきっていない気がしてしまう。
村山作品のもつ透明感が全くなかったのも残念。著者と主人公を重ねて読んでしまったのはわたしだけじゃないと思う。だから余計に生々しい。いろんな部分が。
小太郎の左腕
読了日:2010/03/29
なんてゆーか、和田氏の前作がなんとかって賞を受賞していたので&戦国物って読んだことなかったので手をだしてみた。
「バガボンド」的なものを期待していたよ。もっと猛々しい感じだと思っていたら、わりと俯瞰した書き方なんですねー。いまいち物語に入り込めなかった。
「現代からみた戦国時代はこんなだよ」みたいなやや説明チックな文がちょちょっとはいったりして、それがなんとなく気を削がせていた気がする。
話の内容的には面白いので、わたしと和田氏の相性の問題? 他の作品も読んでみるべきか?
太陽の庭
読了日:2010/03/31
やはり宮木さん。ぐいぐい読んでしまってあっという間に読了。
「現代の大奥」「知られざる特級階級」「地図に存在しない土地」。謎の家系「永代院」と、それをめぐる物語。
【雨の塔】とリンクする部分があって、どうやら続編的な?? 閉ざされた狭い世界での、幸福・狂気・孤独・閉塞感。どれも普通の世界のそれよりも、密度が濃い。
宮木さん特有の美しい文体で、不思議な物語が織り成される。もう一度【雨の塔】が読みたくなった。装丁画はさやかさんの方が好きだなぁ・・・
小説 彼女が死んじゃった。
読了日:2010/04/13
むかーしやってた同名ドラマの脚本家が描いたノベライズ。あれ結果をよく覚えてなかったのでもやもやして読んでみた。
なんだかやっぱりドラマだなぁっていう展開で、ドラマなだけに無理矢理こじつけな現世離れした設定じゃないの。派手さがなくて退屈なんだけど、ひとりの女性の人生をたどっているわけなので、その退屈さと平凡さがリアルなんだね。
流星の絆
読了日:2010/04/13
ドラマをね、見てたんです。すごく好きで、毎週見てて。脚本がクドカンで、だからあんなにコメディ色が強いんだと、そう思ってた。
てことでやっぱり原作気になるよねって。話の流れはドラマとかわらなかった。あの詐欺のサイドストーリーが強調されてたぐらいかな。あと中島美嘉がいないぐらい。
やっぱりこの話は好きだなぁ。ニノが演じた上のおにいちゃんがいい。
そんでもやっぱりドラマが先だったので、そっちのほうが馴染みがある。もいちどドラマがみたくなった!
綺譚集
読了日:2010/04/19
なんだろうこれ。毒々しくてグロテスクで常軌を逸した世界観。グロテスクなものを俯瞰して眺めると美になるとでもいうか… 言葉での説明が難しい。
神聖なものほど実は汚れているんじゃないかと錯覚する。いや。神聖さと醜悪さは背中合わせと言う方が近いのか。
とにかく濃い。一日に三編が限界だった。
荒野
読了日:2013/01/24
瑞々しい少女の感性があふれる世界だった。父親も義母も、奈々子さんも、親友たちも、素敵な個性だったなー。