紺碧の夜に

140文字では足りない にじみだすような思い

読書記録 #1

 

池袋ウエストゲートパーク

池袋ウエストゲートパーク (文春文庫)

池袋ウエストゲートパーク (文春文庫)

 

 

このIWGPは続編がいっぱいでているけど、私はこの1冊が一番好き!

マコトの淡々とした一人称の語りで話が進むのですが、めちゃくちゃテンポがいい。ひとつの事件を過去形として、静かに淡々と見据えて語っているところがいいのかもしれない。

表題作を含めた4話の中で、一番スピード感があってぐいぐいひき付けられたのは『サンシャイン通り内戦(シヴィルウォー)』。池袋の若者たち(マコトに言わせりゃ「ガキども」)のエグ~イ内戦の話。読み出したら止まらない。

登場人物たちの輪郭もはっきりしていて、読み応えのある1冊。

 

 

きらきらひかる

きらきらひかる (新潮文庫)

きらきらひかる (新潮文庫)

 

 

全てが淡々としていてあったかい。そして切れそうなほどキリキリに張った糸みたいな緊張感が、絶えず深い深い奥底にある。

普通ならありえないことが、この話ではありえる。

夫婦の生活の流れの中に時折、突拍子もない小さなエピソードがはいってくるのですが、そんなどーでもいいと思うようなことがこの物語を優しくしているように思います。

結末としては、何かが解決したわけではないけれど、それでもいびつに暮らしていく夫婦関係がとても切なくて悲しくてあったかい。読後はいつも、なんだか人に優しくなれるような気がします。

 

 

リンダリンダラバーソール いかす!バンドブーム天国

リンダリンダラバーソール―いかす!バンドブーム天国 (ダ・ヴィンチ・ブックス)

リンダリンダラバーソール―いかす!バンドブーム天国 (ダ・ヴィンチ・ブックス)

 

 

笑える。そして読後は切ない。時代を全力で駆け抜けたんだなぁ~って思う。

この本、帯には「オーケンの自伝的」みたいに謳っていますが、 たぶんほぼフィクションでしょう。 オーケンがおそらく自分の恋愛事情やバンドの進行などを淡々と語っていくのですが、それがおもしろい!ほんとに笑えます!本読んでて声出して笑うってあんまりないのに、笑いました。

客観的に書かれてるため、余計にそうなるのかも。でもそんな笑いのある本なのに、読後はなんだか甘酸っぱくて切ない。

 

もしこの本をひとことで表せっていわれたら「青春」だと思う。クッセ~!って感じだけど、これがぴったりくる。しっくりくる。

10代後半から20代半ばあたりまでの、加速して生きてる感じやがむしゃらな感じを感じるから。オーケンと同じようにバンドブームをリアルタイムに生きた世代の人が読んだら、もう少し違う感想なんだろ~な~。

 

 

落下する夕方

落下する夕方 (角川文庫)

落下する夕方 (角川文庫)

 

 

「真夏の夕方の、脱力感と気だるさ」を感じる物語。

物語は、8年間一緒に暮らしていた恋人に別れ話を持ち出される所から始まる。

元恋人と入れ替わりで同居することになったのは、元恋人の新しい恋人。それでも主人公・梨果は、元恋人の新恋人・華子を嫌いになれない。空気のように暮らす二人の奇妙な共同生活がちぐはぐで、なんともいえない。

 

言葉では言い表せない「情」があふれるなかで、そこから逃げ出すことも捨てることも、かといって見えないふりもできない3人の気だるくて、重たい日常が描かれている。

 

タイトルの『落下する夕方』は、ほんとうにこの物語にぴったり似合う。関係から逃げることも、捨てることもできないから、ゆっくりと空気が歪んで淀んでいく感じがとてもよくわかる。

きっと誰でも一度は「自分が歪んでいく感覚」を味わったことがあると思うけれど、この作品はその過程をはっきりとゆっくりと感じられる。人間のもつ、数え切れないほどの感情がいりまじった「愛情」の物語だと思う。

もしも読むなら、夏の午後に縁側で。

 

 

うつくしい子ども

うつくしい子ども (文春文庫)

うつくしい子ども (文春文庫)

 

 

読み終わると、なんだかとても悲しい。でもそれだけじゃない。主人公と、主人公と一緒に捜査をしてくれた友達の未来にほんの少しだけ光がさす感じもする。些細な希望。

 

物語の中で、主人公は常に冷静だ。自分の弟が自分の妹と同じ年の女の子を殺したという事実を逃げることなく受け止めて、真実を見極めようと心の中で葛藤を繰り返して、真実にたどり着く。

 

読み進めていくとわかるのだけど、主人公のあだ名の由来は彼の「にきび面」。それなのに、弟と妹はモデルとして活躍するほどうつくしい。

作中で主人公は何度も「自分はうつくしくない」という意味のことをいう。でも最後に一番うつくしいのはまぎれもなく主人公だと私は思う。

大人顔負けの悲しいミステリー。こんな純粋な心でいれたらな、と思った作品。

 

 

ぼくは勉強ができない

ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

 

 

物語の主人公の秀美くんは、いま読み返してもとてもかっこいい。容姿の問題ではなく、その考え方・感じ方・行動が、だ。

1話完結ではあるけれど、それが何話か続いてひとつの文庫となっている。話を重ねるごとに(つまり、物語の中では日を重ねるごとに)秀美君の考え方は成熟していって、大人になっていく。 世間で言う「大人」ではなくて、秀美君がなりたい「大人」に。

こんな子が実際にいたら、当時のあたしは惚れていたに違いない。高校生ぐらいの男の子にこれを読ませたら、きっと人生変わると思うんだけどな。

 

 

天使の梯子 -Angel's Ladder-

天使の梯子 Angel's Ladder (集英社文庫)

天使の梯子 Angel's Ladder (集英社文庫)

 

読了日:2005/02/13

 

「天使の卵」の続編。村山さん独特な、若者の恋愛を正面から捉えた話。

 

夏樹が前作の春妃の透明感と凛とした感じを受け継いでるのかな~って想像してたけど、もっと人間くさい感じの魅力的な女性になってました。歩太も慎一目線からだと逞しい男性になってました。

 

あたしとしては放浪してた頃の歩太の話も読みたいな~と思った。本編(?)と同じで、やっぱり透明で繊細で、凛とした強さを持つ話。たくさんの愛が見える。こういう続編を読むと、なんだかホッとするね。大きさは違っても、誰もが何かを抱えながら生きてるんだ。

 

 

永遠。

永遠。 (講談社文庫)

永遠。 (講談社文庫)

 

読了日:2005/02/13

 

とても透明で静かな空気の漂う話でした。他の作品と比べてメッセージ性が弱くて、意外。

さらりと、過去・現在を行き来していて、なんていうか、「繋がり」ってものは目に見えなくても確実にあるんだろうな~ なんて思える。今の時代なら“よくあるはなし”なのかもしれないけど、その中で揺れ動く人の感情というものを繊細に、くっきりと表しているような気がした。

 

 

スイートリトルライズ

スイートリトルライズ

スイートリトルライズ

 

読了日:2005/12/19

 

「結果的に不倫の話」かな。でもやっぱり江國さんらしく、そんな人間の言葉じゃうまく表せない感情をさらっとかいてます。嫌味なく。

 

一緒に暮らしているはずの聡と瑠璃子。瑠璃子の「この家にあるのは、飢餓」っていう言葉がなんだか痛々しい。

同じく瑠璃子の言葉で「護りたいものに対してそれを護るために嘘をつく」っていう意味のことも言っていてそれもなんだかドキリとした。

 

話し全体は江國さんらしく、ほんとにさらりと淡々と、細かなエピソードを経過していく。この人が描くと、不倫すらも切なくて「正しい」ことのように思えるから不思議。

 

 

会えないときこそきれいでいよう

会えないときこそきれいでいよう

会えないときこそきれいでいよう

 

 

読了日:2005/12/19

昔、古内東子さんの音楽(そして声)がなんだか好きで、その人がどんなことを書いているのかなぁ~っ て気になったので手に取った。

彼女なりの考えや想いが詰まった本なんだけど私は好きです。仕事よりも何よりも、恋(恋人)を優先させるときっぱり言い切る彼女に、とっても好感をもちました。

どきりとすることも書いてあって、自分の気持ちを見つめなおすのにいい本かもしれない。装丁の田辺ヒロシさんのイラストもクールで素敵。

 

 

思いわずらうことなく愉しく生きよ

思いわずらうことなく愉しく生きよ

思いわずらうことなく愉しく生きよ

 

読了日:2006/02/01

 

なんだか不思議な話。ってか、江國さんの話はいつもどこか不思議なんだけど。

三姉妹の個性がおもしろい。でもなんだかはっちゃけない感じだなぁ。じめじめとまではいかないけど、どこか湿っていて、サラっとまではいかないけど、どこか乾いてる感じの話。

 

私としては、麻子夫婦が興味深かった。イチバン人間くさくてドロドロぐちゃぐちゃした感情がでてた。「思いわずらうことなく愉しく生きよ」でも、思いわずらわなくていい人生なんてきっと存在しない。

 

 

東京DOLL

東京DOLL

東京DOLL

 

読了日:2006/04/25

 

ガラスケースのなかのガラスの人形を見つめてるみたいな話。 石田衣良らしい、繊細で冷たい描写が印象的だった。

私もMGみたいな人に会ってみたい。んで、思いっきり買い物してみたい。

 

 

リンさんの小さな子

リンさんの小さな子

リンさんの小さな子

 

読了日:2006/05/15

 

悲しい雰囲気の漂う話でした。言葉が通じるとか通じないってことは、あまり関係ないのかなぁ?ラストはすっごく悲しくなってきた。 最終的にリンさんがどうなったのか気になって仕方ない・・・・やっぱり海外文学は苦手だー。

 

 

人魚姫のくつ

人魚姫のくつ (新潮文庫)

人魚姫のくつ (新潮文庫)

 

読了日:2006/06/08

 

さらっと読める。まり子の行動はなんだかすごいな~。残酷でなんだか後味がビター。まり子の足を是非見てみたい。

 

 

夜市

夜市

夜市

 

読了日:2006/08/21

 

ホラー大賞受賞ってことだけど、ホラーっていうよりもミステリー?

日本独特のひっそりした感じの物語二編が収録されていて、どちらもそれぞれ魅力的で面白い。日常の歪みの中に存在する非日常・異世界への扉。いつか自分も迷い込む可能性があるんじゃないかと思える感覚。ふわりとした素敵なホラー(ミステリー)だった。

 

表題作の「夜市」は読後になんだか切ない。思い込みの中にいつまでも溜まっている罪悪感。忘れられてしまう対象である方が辛いのか、その対象を忘れられない方が辛いのか。兄も弟も、どちらも悲しくて優しい。

 

「風の古道」は背筋かひやりとして、思わず自分の背後が気になってしまうような場面が数箇所あった。流浪の旅を自分も一緒にしているような感覚。脇役として登場するはずのレンが、ひどく強い存在感を放っていて、彼の過去の描写はとても不思議な物語。

 

去る者と残される者。あるいは、訪問する者と迎え入れる者。それぞれの世界を生きる者たちの不思議な関係。熊野古道や屋久島、富士の樹海なんかと繋がっていそうだな と、勝手に想像して納得してしまった。

 

 

ウーマンズ・アイランド

ウーマンズ・アイランド

ウーマンズ・アイランド

 

読了日:2006/08/25

 

短編だったので読みやすかった。

各章が特定の人物とリンクしていて、最後はどうなるのか楽しみだったけど、意外と大きなひっかかりもなく終わってしまった。

いろんな職業のいろんな女性のいろんな考え方。共通点は特定の人物と、特定範囲の年齢。そっか~って感じ。

 

 

anego

anego

anego

 

読了日:2006/08/27

 

先日、同作者の「ウーマンズ・アイランド」を読んだけど、なんだかそれと似たり寄ったりな感じ。文章の組み立て方が女流作家にしては緻密で、男性的。

篠原涼子が主演したドラマがヒットしたらしいから読んでみるかって感じだったけど、これを読んでハッキリわかった。あたし、この人の恋愛小説は全く合わない。なんでそんなに30代女性の恋愛・結婚の表面的なことばかり書くんだろう?不思議。

ありきたりなストーリー展開にもちょっと・・・。短編で綴っていた分、前述の「ウーマンズ・アイランド」の方が読みやすかった。

 

 

陽気なギャングが地球を回す

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)

 

読了日:2006/10/19

 

とりあえずテンポがいいし、主要キャラ4人が魅力的!

4人の視点から順番に物語が進んでいくんだけど、「あの時この人はこう考えてたんだ!」とか「あの態度の理由はこれか~!」とか思えるのがいぃ。だから私は色んな視点から進む物語って好き。

 

銀行強盗っていう「悪」とされるものを、変な手順や見栄や意地や自己顕示欲をだすことなく、サラッとこなすこの4人は格好いい!

 

 

流星ワゴン

流星ワゴン

流星ワゴン

 

読了日:2006/11/01

 

自分で気づかない自分の人生の分岐点。そこに戻って…。

戻っても別にやり直せるわけでもない。過去を変えたつもりでいても、現実世界には反映されてない。ただ、自分で分岐点だと気づいていない時に行って(強制的に連れて行かれて?)、行動するだけ。過去と同じでもいいし、違ってもいい。だって現実世界には反映されないから。

 

なんの意味があるんだろ~…って思った。最初は。だって意味ないってわかってるのに、つらいことをただ繰り返すのなんて絶えられない。

 

主人公・カズの父との関係も難しい微妙なものなんだけど、突然登場する自分と同じ年の時の父(チュウさん)と一緒にすごすうちに色々なことが見えてきて、わかってきて…。

家族の絆や親子の絆について考えさせられる。いつも同じ家にいる家族でも、見えていないことやわかっていないことのほうが断然多い。

 

家族って、親子って、こんなにもごく些細で簡単なことで、でもすごく難しいことですぐに壊れてしまうものなのかな?不覚にも、チュウさんがオデッセイに同乗した辺りからウルっときた。 あたしはカズよりもチュウさんが好きだなぁ。

人間誰だって弱いよ。

 

 

プリズンホテル〈1〉夏

プリズンホテル  1 夏 (集英社文庫)

プリズンホテル 1 夏 (集英社文庫)

 

読了日:2006/11/05

 

リズムがよくて設定がおもしろく、場面転換も滑らかで一気に読んでしまった。私の中では三谷幸喜さんの「有頂天ホテル」のイメージ。

 

「奥湯元あじさいホテル」の宿泊客と従業員(極道)の視点で入れ替わり立ち代りして話が進むので、全然飽きない。それよりもなによりも、従業員たちの極道ぶりがもうこてこてのコメディ!

極道ものって見たことないし読んだことないから、どれぐらい現実に忠実なのかわからないけど、面白いのでそれはこの際どうでもいいです。